図締切前の日曜夜。ボスが 30 分のミーティングでホワイトボードにモデルを描いた。あなたは携帯で写真を撮ったが、戻ってみると写真はブレていて、2 本の矢印はどちらにも見えるし、上のループがフィードバックなのか分解ステップなのか思い出せない。推測して間違った図のリスクを取るか、メールして一晩潰すか。
科学描画 AI ワークフローは、ミーティングをしっかり記録する手間を肩代わりはしない。代わりに肩代わりするのは「描き直し」のほう —— 23 時の Illustrator でピクセルを動かす時間。このガイドは研究者が実際に使うワークフロー:写真かスケッチを入力、構造化プロンプトを中間、編集可能な SVG を出力。
ワークフローを「やり直し」に変えてしまう代表的なミス
- AI 出力をそのまま最終図扱いする — モデルは「もう完成」に見える磨かれた画像を出すが、中の科学的関係はあなたの責任。必ず SVG で書き出してラベル・矢印を編集可能に保つ。
- 写真を説明なしで投げる — image-to-image モデルは見たままを描き直し、ぼやけたピクセルを「ありそうな接続」に脳内補完しがち。写真と一緒に科学を言葉で書く。
- 「Nature っぽくして」 — それで返ってくるのは装飾であって明快さではない。構造的関係を先に書く。
- 方向性を失う — スケッチの矢印は「これがあれに影響」程度に曖昧。科学図では活性化、阻害、転位、時間方向を視覚的に区別する必要がある。明示的に書く。
- 検証ステップを飛ばす — AI 生成図はスケッチになかったラベル・要素を頻繁に「足す」。書き出し前に必ず原本と並べて diff する。
悪いプロンプト vs. 改善後のプロンプト
ホワイトボードに描かれたキナーゼカスケード写真での Before / After:
短すぎる例 — 様式化されているが検証不能なイラスト:
Turn this whiteboard photo into a clean scientific figure.再構成 — 信頼でき、編集可能な図:
Convert the attached whiteboard photo into a clean schematic of a kinase signaling cascade.
The sequence is: extracellular ligand → membrane receptor → MAPKKK → MAPKK → MAPK → nuclear transcription factor → target gene.
Use right-arrows for phosphorylation steps, dashed arrows for translocation across the nuclear membrane, and a separate panel for the inhibitor (small molecule blocking MAPKK).
Preserve the exact node names from the photo: do not invent additional proteins or substrates.
Style: clean vector schematic, white background, room for editable labels, no 3D rendering.
Output as a layered SVG so I can correct labels in Illustrator.構造化版は短い版にはできない 2 つの仕事をしている:各ノードを名指し(モデルが余計なものを発明できない)し、各矢印の意味を定義(モデルが推測できない)する。
補足:プロンプトは英語のまま。現行の画像モデルは英語トークンに対して最も安定して応答する。本文は日本語・プロンプトは英語が科学コミュニティの標準。
AI に推測させてよい部分 vs. 必ず指定する部分
このワークフローの最重要判断は「どこまで言葉で書くか」。実用的な分け方:
| AI が推測してよい | あなたが指定する必要がある |
|---|---|
| 視覚スタイル、アイコンデザイン、配色 | すべての要素名、すべてのラベル |
| レイアウトの比率と間隔 | すべての矢印の方向 |
| 背景、装飾要素 | 各矢印が活性化 / 阻害 / 転位のどれか |
| 縦横比、トリミング | 概念図か実データ図か |
| 汎用オブジェクトのアイコン(細胞、臓器) | 具体的な分子構造、臨床所見、定量値 |
右列のものは写真に写っていてもプロンプトに書く必要がある。モデルはぼやけたスケッチから科学構造を信頼性高く読み取れない。
例

例では 3 段階が明示されている:生スケッチ → AI ドラフト → 編集可能図。科学内容は変わらず、視覚言語が各段階で洗練されていく。AI ドラフトは 最終版ではない —— 編集可能なレイヤーが最終版。
ソース素材別コピー&ペーストテンプレート
角括弧の中身をあなたの研究で置き換える。
1. ホワイトボード写真のクリーンアップ
Convert the attached whiteboard photo into a clean scientific schematic of [topic].
The components are: [list every node visible in the photo, in order].
The connections are: [for each arrow, state source → target and what it means (activation, inhibition, translocation, conversion, transport)].
Preserve exact labels from the photo: do not invent additional components.
Style: clean vector schematic, white background, editable labels, no 3D rendering.
Output as a layered SVG.
2. プロトコルノートからのメソッド図
Create a methods figure from the following protocol notes: [paste protocol].
Group steps into four blocks: [sample preparation], [treatment], [measurement], and [analysis].
Use a horizontal workflow with numbered steps. Keep labels short enough to fit a single-column methods figure.
Show the instrument or assay icon at the measurement step; use a simple bar chart or table icon at the analysis step (no real numbers).
Do not invent missing protocol steps. If a step is unclear in the notes, leave it as a labeled placeholder I can fill in later.
3. 発表 / 助成用コンセプト図
Draw a conceptual scientific figure explaining [idea or hypothesis].
Components to show: [main actor], [process they undergo], [output or readout], and [feedback or downstream effect].
This is for a [grant panel / department seminar / public talk]. Keep labels readable from 2 meters away.
Use schematic style, not photorealism. No real data values. No journal logos.
4. 既発表論文図をレイアウト参考に
Use the attached figure from a published paper as a layout reference only.
Recreate the structure for our own study on [topic]: keep the panel arrangement and arrow style, but replace [their component] with [our component], and update labels to: [list of labels].
Do not copy the exact illustrations. The output must be original and not infringe the source figure.
Style: editable vector, consistent with our previous figures.役割別の使い方
- 博士 1 年生:テンプレート 2(プロトコルからメソッド図)から。実験ノート自体が既に構造化プロンプトなので、整形するだけ。
- 学生の図をレビューする PI:スケッチ と AI ドラフト と 編集可能 SVG を全部要求すること。AI ドラフトしかない=検証ステップが飛ばされている。
- トーク準備中のポスドク:テンプレート 3。10 分のトーク用コンセプト図は画面上に最大 4 要素まで。
- ホワイトボード文化のあるラボのマネージャー / PI:ミーティング終わりにホワイトボードを撮影し、同じ週内にテンプレート 1 で処理。待てば待つほど解釈ドリフトが図に紛れ込む。
SciDraw AI での現実的なワークフロー
- きれいに撮る:スケッチかホワイトボードを携帯で、十分な光量で、全要素が見える状態に。AI に全体を見せる前にトリミングしない。
- プロンプトを画像と並行して書く:notes を開いて、全ノード・全矢印を列挙する。これがモデルより先にあなた自身に科学を検証させる。
- 構造化バリアントを 1 つ先に生成:プロンプトと照合する —— 美的感覚と照合するのではない。モデルは全ノードを保持したか? 各矢印の向きは正しいか?
- 画像ではなくプロンプトを反復改善:図が違うならプロンプトを直す。同じ間違ったプロンプトで再生成するのはクレジットを最速で溶かす方法。
- SVG で書き出してラベル編集:出力がラスタのみなら vectorize image で変換。最終ラベル編集は Illustrator / Inkscape / PowerPoint で。
- ソースと照合:原スケッチと最終図を並置。全ノード・全矢印が一致するべき。
書き出し前チェックリスト
- 図内の全要素は、原スケッチにあったか、プロンプトで明示的に追加された。
- 矢印の種類ごとに意味は 1 つで一貫している。
- 捏造数値、偽ジャーナルロゴ、捏造信頼区間がない。
- 最終表示サイズ(カラム / ポスター / スライド)でラベルが可読。
- 出力が編集可能形式(SVG、レイヤー PDF、
.ai)であり、フラット化ラスタではない。 - 臨床・化学内容が含まれる場合、ドメイン専門家が最終版を承認済み。
関連する SciDraw AI ワークフロー
Scientific Drawing · Scientific Figure Maker · AI Scientific Illustration · Vectorize Image
よくある質問
このワークフローを使うのにスケッチは整っている必要がある?
不要。マーカーで描いた絵を携帯撮影でも問題ない。重要なのは あなた自身が 各要素・各矢印の意味を把握していること。AI はあなた自身の曖昧さからは救えない。
AI に絶対任せてはいけないもの?
正確な分子構造、臨床的主張、定量値、分野固有記号(数学のギリシャ文字、化学の IUPAC 構造、医学の解剖ランドマーク)。生成後に必ず手動チェック。
なぜ AI 出力を直接使わず SVG に書き出すのか?
レビュアーが必ずラベル変更を要求し、ラベルが AI 生成図で最も脆い部分だから。SVG はラベルをピクセルではなく編集可能テキストとして保持する。
AI が何かを発明したと気付くには?
出力をソースと diff する。AI 出力の全ノード・全矢印を辿り、スケッチかプロンプトに由来することを確認する。辿れないものはハルシネーション。
臨床図や手術図に使える?
下書き に使うのはよいが、最終版には絶対不可。臨床図は出版・患者配布前に臨床医または有資格メディカルイラストレーターのレビュー必須。AI はスケッチツールであり臨床権威ではない。
モデルが頼んでない要素を足し続けるときは?
プロンプトに明示的な negative constraint を加える:"Do not include any components other than the ones listed above." モデルは暗黙の minimal 要求より明示的な negative constraint をはるかによく尊重する。



