ボスから同じコメントが 3 度返ってくる:「この図では何をやったのかわからない」。プロンプトを書き直すと、図はきれいになるけれど、コメントは一字も変わらず返ってくる。問題はモデルではなく、プロンプトが「研究の絵」を頼んでいて、各パネルの役割・要素間の関係・矢印の意味を記述していないことにある。
このガイドでは、PI レビューに耐えるプロンプトの形、最もクレジットを消費する失敗、論文図のおよそ 80 % をカバーする 4 種類のダイアグラム用のコピー&ペーストテンプレートを示す。
クレジットを浪費する代表的な失敗
テンプレートに入る前に、再生成を強いるパターン:
- 「研究の図を作って」 — パネルも役割も関係性も指定がない。モデルは適当なレイアウトを作り、次のプロンプトで結局あなたが修正する。
- 構造より先にスタイル語 — 「CRISPR 編集のきれいな Nature 風図」 は、矢印が適当に並んだ磨かれた画像を返す。レビュアーは見栄えではなく、因果の向きが正しいかを見ている。
- 4 種類を 1 枚に詰め込む — ワークフロー + 機構 + 結果 + 比較を 1 パネルに入れると誰も読めない。分けること。
- 数値をモデルに作らせる — 「条件 A が B より良いことを示して」と書くのは、AI に数値の捏造を許可するのと同じ。プレースホルダーを使い、実数は編集で追加。
- 想定読者を書かない — 助成審査向けの図と、メソッド補足の図ではあるべき密度が違う。プロンプトに必ず読者を書く。
悪いプロンプト vs. 改善後のプロンプト
CRISPR ノックイン実験を例にした実際の Before / After:
短すぎる例 — 汎用的な遺伝子編集イラストが出る:
Make a scientific diagram of our CRISPR knock-in experiment in mouse hepatocytes.再構成 — 1 回の生成で編集可能な 4 パネル図が出る:
Create a 4-panel scientific figure for a CRISPR knock-in study in primary mouse hepatocytes.
Panel A (workflow): isolation → transfection (Cas9 + guide RNA + donor template) → selection → expansion. Use numbered steps.
Panel B (mechanism): show double-strand break at the target locus, HDR repair using the donor, integration of the knock-in cassette. Use activation arrows for cutting, dashed lines for template binding.
Panel C (comparison): two columns, wild-type vs. knock-in. Leave readout values as placeholders.
Panel D (result summary): three icons for the three downstream assays. No numeric claims, no conclusion text.
Audience: methods reviewer. Style: clean vector, white background, consistent color per panel, room for labels.後者は長いが、1 回の生成で済む。前者は通常 3〜4 回の作り直しになる。
補足:プロンプトは英語のまま使う。現行の画像モデルは英語トークンに対して最も安定して応答するため、本文は日本語・プロンプトは英語が科学コミュニティの標準的なやり方。
プロンプトの解剖:必須の 4 要素
80 語を超えるダイアグラムプロンプトは、すべて同じ構造に収束する。1 つでも欠けると、モデルは装飾で隙間を埋めにくる:
- 読者 — 誰が読むのか。メソッドレビュアー、助成審査、学部生、ポスター前の通行人。情報密度とラベルの語調が変わる。
- 構造 — パネル、ステップ、システムブロックを先に名指しする。これが耐力壁。スタイル語("Nature-style", "clean")は構造が決まった後でしか効かない。
- 関係性 — 各コネクタが何を意味するか。活性化 vs. 阻害、フロー vs. 相関、空間順序 vs. 時間順序。モデルが最も間違えるところ。
- 編集可能性 — "leave room for labels", "use placeholders for values", "vector-friendly layout" を明示する。さもないとモデルは画像を詰め切り、後から直せない。
例

注目点:パネルは機能で分かれている、ラベルは捏造値ではなくプレースホルダー、パネルごとに 1 色なので視線がどのブロックを読んでいるかすぐ分かる。
ダイアグラム種別ごとのコピー&ペーストテンプレート
角括弧の中身をあなたの研究に置き換えるだけ。構造的な語彙は触らない。ブロックが本当に存在しない場合だけプレースホルダーを削除する。
1. 論文用マルチパネル図
Create a multi-panel scientific diagram for [study topic].
Panel A: [experimental workflow with 3–5 numbered steps].
Panel B: [mechanism or model — name the molecules, organs, or system blocks].
Panel C: [comparison of groups, conditions, or methods — leave numeric readouts as placeholders].
Panel D: [result summary — icons, not invented values].
Audience: [journal reviewer / grant panel / conference]. Use consistent color per panel, white background, vector-friendly layout, and room for labels.
2. 機構図
Create a mechanism diagram for [biological / chemical / physical process].
Show [trigger or upstream signal] leading to [intermediate steps] and [downstream outcome].
Use activation arrows (→), inhibition marks (⊣), and dashed lines for hypothesized links.
Label the major molecules, complexes, or system components. Keep a clean white background.
Do not invent quantitative values. Leave room for adding rate constants or concentrations in editing.
3. ワークフロー + 計測アウトプット図
Create a scientific workflow diagram for [method].
Steps: [sample input] → [preparation] → [treatment] → [measurement instrument] → [analysis pipeline] → [final output].
Use numbered steps and short labels suitable for a methods figure or supplementary panel.
Use a horizontal layout. Avoid decorative lab benches or stock photographs.
4. パスウェイ / ネットワーク図
Draw a [signaling / metabolic / regulatory] pathway diagram for [pathway name].
Nodes: [list the major proteins, metabolites, or regulators].
Edges: use activation, inhibition, and translocation arrows where appropriate.
Group nodes by compartment (extracellular, cytoplasm, nucleus, mitochondrion) using subtle background panels.
Style: schematic, journal-ready, no 3D renders, no fabricated kinetic values.役割別の使い方
- 初めてメソッド図を書く大学院生:テンプレート 3(ワークフロー)から。実験ノートに最も近く、許容度が高い。
- 助成 resubmission 段階の PI:テンプレート 1(マルチパネル)で研究全体を一望させ、テンプレート 2 の機構図を併用する。
- 広報・サイエンスイラスト担当:テンプレート 2 または 4 を使い、SVG 出力を明示的に要求してブランドカラーに再スタイルできるようにする。
- 教育場面:上記の悪いプロンプトは、学生に「なぜ図が毎回リジェクトされるのか」を最短で示せる教材になる。
SciDraw AI での実際のワークフロー
- まず「1 文の目的」を書く — 「Alb 遺伝子座に蛍光レポーターをノックインした方法をメソッドレビュアーに説明する」。書けないなら、図はまだ準備できていない。
- 目的に合うテンプレートを選び、SciDraw AI に貼り、角括弧を置き換える。
- 2〜3 バリアント生成し、最も階層が明確なものを選ぶ。最も美しいものではない。
- SVG で書き出すか vectorize image ワークフローで変換し、Illustrator / PowerPoint / Inkscape でラベルを修正。
- 実数値は手で入れる。結論文をモデルに書かせない。
投稿前チェックリスト
- 各パネルが 1 つの仕事だけを担う。同じ仕事の 2 パネルは統合。
- 矢印の種類ごとに意味は 1 つ(「活性化」と「次のステップ」を同じ矢印にしない)。
- 実データに由来しない数値が画像内にない。
- カラム幅 100 % 表示でラベルが読める(拡大時だけではない)。
- 医療・化学・安全性が関わる場合、最終版を専門家がレビュー済み。
関連する SciDraw AI ワークフロー
Scientific Diagram Maker · Workflow Diagram Generator · Mechanism Figure Generator · Graphical Abstract Maker
よくある質問
AI の図は綺麗に見えるのにレビュアーが落とすのはなぜ?
仕上げの綺麗さと構造の正しさは独立した変数。リジェクトされる図はむしろ「綺麗すぎる」ことが多く、指定しなかった関係性をモデルが勝手に推測してそれが間違っている。解決策:あらゆるスタイル語より前に構造と関係性を書くこと。
すべての論文にマルチパネル図が必要?
不要。手法・機構・比較・結果を 1 枚に統合する必要があるときだけ。単一論点なら単一パネルの機構図やワークフロー図のほうが明快。
モデルに数値を捏造させない方法は?
3 点:placeholder を明示要求する、結論文を禁止する("no text claiming significance")、字面通り描かれたくない数値はプロンプトに貼らない。実数値は後処理で追加。
プロンプトはスタイル先・構造先のどちら?
常に構造先。スタイル語("Nature-style", "minimal", "clean")は仕上げを制御するだけで科学を制御しない。パネル・要素・矢印・ラベルを先に定義し、スタイル語は最後に 1〜2 個。
同じプロンプトで論文図とポスターを両方作れる?
不可。情報密度が違う。論文図はカラム幅 100 % + キャプション付きで読む、ポスターは 1.5 m 離れてキャプションなしで読む。ポスター用に書き直す:短いラベル、大きいアイコン、少ないパネル。
良いプロンプトの長さは?
マルチパネル図で 80〜150 語。短すぎるとモデルが構造を捏造し、長すぎると自己矛盾する。200 語超なら、それは多分 2 つの図。



